株式会社トモエシステム – 企業価値協会 Skip to content

株式会社トモエシステム

株式会社トモエシステム

株式会社トモエシステム
兵庫県神戸市兵庫区大開通 7-1-17
TEL: 078-576-1088
http://tomoe-system.co.jp

代表取締役社長 柳瀬 秀人

代表取締役社長 柳瀬 秀人

2021年 認定

代表取締役社長 柳瀬 秀人
創業:1947年
主たる事業:産業機械用部品の販売

産業機械部品の専門商社として独自の立ち位置を確立。全世界で生産される油圧ショベルカーの約70%、国内100%のメーカーに納入。顧客の開発企画段階から関与、品質管理まで行いメーカーとサプライヤー、双方に不可欠な繋ぎ役を担う。また数々の働きやすい環境づくりは見事。取引先、社員の皆から支持される特徴的価値を有すると認定。

特徴・差別点等

「コロナ禍で発揮した共創の力 働き方改革の現在地」

トモエシステム柳瀬秀人社長に聞く
 まちづくりに欠かせないショベルカーやクレーン、ダンプカー。幼い頃に誰もが憧れた大型建機のイノベーション(革新)を支える企業が神戸市にある。世界中の建機メーカーに部品を納める専門商社トモエシステムだ。「ともに創る」をモットーに掲げる同社の強みはコロナ禍でも発揮された。男性育児休暇取得率100%を達成するなどホワイトで働きやすい職場環境づくりの取り組みとともに、同社の強みや今後について、柳瀬秀人代表取締役社長(45)に話を聞いた。

1. 横流しでは商社は生き残れない

――最初に御社の歴史と事業内容について教えてください。

 「当社は1947年に祖父の柳瀬朝永(ともえ)が巴(ともえ)商会として創業しました。モータリゼーションの波をとらえて自動車の修理部品の卸しをしていましたが、その後、神戸に工場を持つ大手重工業企業数社と取引が始まり、建機を中心に農業機械、産業用機械に事業を広げました。2000年代に入り、顧客の海外進出に合わせ、我々も中国やタイ、アメリカ合衆国に子会社をつくりました。中国は特に重要な市場で、13名の現地スタッフが働いています。こうして現在は、建機の全ての市場の約40%、主力の油圧ショベルカーの市場では、全世界で約70%、国内ではほぼ100%のメーカーに部品を納入しています」

――御社の強みは何でしょうか。

 「これまで築いてきた取引先との信頼関係だと考えています。その信頼関係は、時におせっかいかもしれないけれど、取引先と一緒になって問題解決や商品づくりをしてきた中で育まれたものです。2016年の社内改革では、当社のこうした価値を言語化し、『ともに創る』というモットーを掲げました」
 「ブーカ(VUCA:Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)」の時代と言われますが、解決策を誰も知らない、新しいものが求められる中で、我々は顧客とともにその答えを探していくことが求められています。取引先800社8000部品の中から最適解を探し、機能とコストのバランスが取れた新しい部品の提案をしていく。例えば、30年前にあるエンジン管理の部品を、モーター、基盤、ケーブルの各部品メーカー3社と協力して商品にして売り出しました。その商品は今でも価格競争力が高く、売れ続けています。こうした共創の力こそ、当社の強みです」

創業70余年の歴史を持つ、産業機械部品の専門商社
創業70余年の歴史を持つ、産業機械部品の専門商社

2. コロナ禍で仕入先が倒産、共創力で乗り切る

――新型コロナウイルスの感染拡大の御社への影響を教えてください。

 「建機の業界は需要の変動が大きく、平気で2割程度売り上げが減ることがあります。ただ、昨年5月は新型コロナ感染拡大の影響で前年比5割近く売り上げが減り、影響の大きさを実感しました。ただ、6月以降は徐々に回復し、10月後半からは前年を上回っています。中国で景気回復がいち早く進んだほか、米国も住宅着工が好調で、足元では建機の需要が非常に強くなり、業績は昨年を上回る勢いになってきました」

――コロナ禍で印象に残る出来事があったそうですね。

 「昨年春に、仕入先の部品メーカー2社が相次いで倒産しました。VUCAの時代と考えてきたので、比較的冷静に受け止められたのですが、それでも、商品在庫が尽きれば、部品の供給が途絶えることになり、お客様の生産に影響がでかねない状況でした。しかし、顧客からは『信頼を置いているトモエシステムだからこそ、責任を持って部品を供給していただきたい』とのお声もあり、本来2~3年で新しい部品はつくりますが、今回は3カ月でつくる必要がありました」
 「顧客の大手建機メーカーさんと、新たに生産をしてもらう部品メーカーさん、そして我々とでプロジェクトを立ち上げました。このときばかりは、必死の思いで多少の無理もしましたが、なんとか3カ月で完成までこぎつけることができました。これまでの信頼関係や、ともに創る力を発揮し、さらなる関係の強化につながったと考えています。コロナ禍で打ち上げの飲み会ができなかったのだけが残念です(笑い)」

「ともに創る」を経営理念に掲げ、顧客とサプライヤーをつなぐ事業を展開
「ともに創る」を経営理念に掲げ、顧客とサプライヤーをつなぐ事業を展開

3. 多数の外部機関評価を得た働き方改革

――今年2月には、若手の採用・育成に積極的で雇用管理の状況が優良な企業を厚生労働大臣が認定する「ユースエール企業」をハローワーク神戸管内で初めて取得しました。

 「事業活動の源泉は人材です。私も今の人事部長も、外の会社から来ています。大手企業並みの福利厚生を整え、シニア(高齢者人材)や女性、子育て社員をできるだけ支援して働きやすい会社、誇りを持てる会社にしようと改革を進めてきました。数年前までは女性の総合職の採用はゼロでしたが、3割となりました。また、男性の育児休業取得も奨励していて、これまでに4人中4人が1週間程度を取得し、取得率は100%です。男性の育児休業は人事から制度があるので使うように積極的に呼びかけています。2019年には兵庫県初のホワイト企業アワードを取得し、その後も経産省や兵庫県をはじめとする多くの団体から過分な評価をたくさん頂いています」

――残業は多いのでしょうか。

 「確かにかつては午後10時ごろまで当たり前のように働いていました。私自身もそうした働き方をしていましたが、今では午後7時にはほとんど社員がいない状況です。社員の月平均の残業は直近で6.3時間です。残業を当たり前にしないからこそ、本当に残業が必要なときには集中して仕事をすることもできます。一連の働き方改革は大きな成果につながっています。例えば、離職率は改革前に比べ、10ポイント近く下がり、2.3%です。これは業界全体の15.5%を大きく下回ります。興味深いのは、離職率の低下にともなって、売上高が増加基調にあることです。新卒採用でも、会社エントリーが3倍、説明会参加は5倍に増え、TOEIC900点以上の人材を5人擁する組織になりました」

男女共に育休取得率は100%を達成。働きすい環境は多数の評価を頂いています
男女共に育休取得率は100%を達成。働きすい環境は多数の評価を頂いています

――今後、どういった点に力を入れていきたいですか。

 「働き方改革は社員の幸せを高めるとともに、社員にはプロ意識や経営者の意識を持ってもらい、会社と社員が一緒になって会社をつくっていく、良くしていくということを目指していきたいと考えています。事業面では、変化が非常に激しい中で、グローバル化や建機のIoT化、自動化に貢献できる企業でありたいと考えています。建機の市場の6割が中国であり、中国メーカーの躍進も大きい。そうした動きに我々がどう対応していくのか、どういうサービスを提供していくのか、今後10年が攻めの時期です。数年後の決算書がいまの通信簿。ともに創る、共創の精神で成長につなげていきます」

働きやすさと働きがいの両方を追求し、さらなる成長へ
働きやすさと働きがいの両方を追求し、さらなる成長へ

【プロフィール】柳瀬秀人(やなせ ひでと)。1974年、神戸市生まれ。1997年に関西学院大商学部を卒業し、大手食品メーカーに入社。2007年に会計コンサル会社を経て、2010年に祖父が創業したトモエシステムに入社、2016年から現職。オフでは8歳と6歳の娘と遊んだり、習い事に連れて行ったりする。座右の銘は「人事を尽くして天命を待つ」

【会社概要】株式会社トモエシステム。神戸市兵庫区。1947年に自動車部品の卸業で創業、1950年より建機事業に参入し、1951年に株式会社化。建機や農業機械、産業機械の部品の専門商社。2002年にトモエシステムに社名変更し、自動車部品部門は分社化した。2019年4月期の売上高は124億円。
連絡先は人事総務部(TEL:078-576-1001)/HP:http://tomoe-system.co.jp

鈴木 信也
経済ジャーナリスト